めるせです


平日の真昼間、俺は車で国道を走っていた。

どこへ向かっているのかはっきりしなかったが、とにかく右に曲がらなければいけない感覚だけはあった。
右折車線へ入る俺。

当然ながら交通量は多く、右折信号→矢印が点灯するまでは曲がれそうもなかった。
俺の前には右折待ちの車が3台、俺と同じに、アクセルを踏み込みたい衝動を理性と恐怖心で抑えているようだった。

そこへ後方から1台の車がやって来た。
制限時速60キロの国道右端車線をとろ臭い動きで右折車線へと入って来る姿を、俺の車のルームミラーが捉えていた。
ゆっくりと、本当にゆっくりと俺の尻へ迫るS600。
次第に運転手の顔立ちすら、はっきりと見えるようになった。
携帯を片手に電話をしながらの運転、遅いはずだ。

あまり知性や品性を持ち合わせた顔には見えなかったが、正に見た目通り、そんなものどこか遠くへ置いてきたというわけだ。

そんなどうでもいい考えを巡らせているうちに、ミラーの中のS600は俺のすぐ後ろに迫っていた。
相変わらず携帯は離さない。(ダジャレではない)

―ブレーキ遅くないか・・・?

そう思った刹那のことだった。
S600にしてはあまりにも愚鈍なクリープで、そのまま俺のリアスポイラーへとまっしぐら。
ザラザラした硬い物同士を擦り合わせたような嫌な音と共に、後ろからの緩い衝撃が俺を襲った。

―さあ、喧嘩の時間だ。


こんな夢を見た。



これといって意味はない。